2023年02月09日口腔の痛み
お口の痛みで耐えられないほどの痛みを訴えて歯医者へ来院される方もいらっしゃいますが、皆様は経験ありますでしょうか?
歯だけでなく歯茎の痛みなど口腔内の痛みは強い疼痛や食事や会話のたびに起こる不快感など、我慢できないものも多いです。
そんな口腔の痛みの原因について歯医者という立場から今回は話をします。
歯がしみる
虫歯
歯がしみる原因としてまず思いつくのは虫歯でしょう。ただ虫歯が原因のしみる症状と言っても、冷たいものや温かいものでしみる、甘いものを食べた時にしみると様々です。ここまで症状のある方の多くは歯の表面から2層目の象牙質という組織にまで虫歯が及んでいるパターンが多いです。象牙質まで及ぶ虫歯(C2)はそこから放置しても進行するだけなので虫歯を取り除かなければなりません。CR(白いプラスチック)や範囲が広ければクラウンやインレーといった補綴処置が必要になります。
放置し続けると神経まで虫歯が進んだり、最悪の場合抜歯になることもあるので早めの処置をお勧めします。
Ce~C1といった最表層のエナメル質に限局した虫歯は今は削らないことも多いので歯医者でのレントゲン診査が必要となります。
知覚過敏
もう一つしみる原因として考えられるのは知覚過敏です。歯の一部がえぐれたり、ひび割れを起こしたり、歯の表面が溶けたり、ホワイトニングの副作用等が考えられます。しみる症状が無くなることも大切ですが、根本的な原因を歯医者で診断することが重要です。
何もしなくてもズキズキ痛む
痛みが我慢できずに歯科医院に急患で歯科医院に駆け込む1番のパターンでしょう。
歯髄炎
まず考えられるのは歯髄炎。神経まで虫歯が進んでしまった場合の痛みです。急性化していると痛み止めも効かず、寝れないほどの痛みを生じます。感染した神経を取ることで絶望的な痛みから解放されます。これは我慢していても消失する症状ではないので今すぐ歯医者に電話しましょう。
根尖性歯周炎
次に根尖性歯周炎。これは先程の歯髄炎が死んでしまい根っこに膿を溜めている状態のこと。『神経をとっているのに痛いの?』と聞かれることもありますが、これは根の先に膿を溜めて内圧が高まり、骨の中での炎症で痛みを生じています。神経を取った歯もズキズキ痛むのです。
急性期の炎症は抗生剤が有効な場合も多いので歯科医院で処方してもらいましょう。
歯根破折
歯の根っこが割れたことで痛みを生じます。割れた場所を起点に周囲の歯槽骨や歯肉に炎症を起こすことで強い痛みになることがあります。抜歯になる割合が多いですが、割れ方によっては保存できる場合もあります。保存の可否も大切ですが、保存するための手法、抜いた後の対処など歯医者によって見解がありますので、迷うときにはセカンドオピニオンも上手く活用しましょう。
歯茎が腫れて痛い
歯周炎
1番多いものは歯周炎が酷く急性炎症を起こしてしまった場合です。根本的な原因は磨き残しなどの汚れですが、急激な細菌の増殖により化膿してしまうことがあります。洗浄と抗生剤投与で落ち着きますが、根本的な汚れを取らないと繰り返します。ホームケアでは取れない汚れは歯科医院で定期的にプロケアを受けましょう。
根尖性歯周炎
根尖性歯周炎とは根っこに膿が溜った病態。先に紹介した神経が腐敗し根の先に膿を溜めてしまう疾患。原因は骨の中ですが歯肉にまで膿の通路を作り歯茎まで腫れて痛くなる場合があります。歯茎に水膨れのような腫れを作ることもあります。
抗生剤などで一時的に落ち着きますが、根っこの治療が必要となります。
放置すると抜歯や嚢胞や腫瘍病変など病院歯科の受診が必要になる場合がありますので、早期にかかりつけの歯科医院へ相談しましょう。
智歯周囲炎
親知らずが原因の歯肉の腫れです。これも口腔の強い痛みや腫れを伴うことがあります。汚れが原因となりますが、自力で取れない場所に磨き残しが入り込みます。歯科医院で洗浄をして抗生剤投与で一時的に落ち着きます。たいがいは根本的治療として親知らずを抜かないと解決できないことが多いです。
症状が落ち着いて様子を見ているパターンも多いですが、無症状に周辺組織が悪化する場合もあるので注意が必要です。
顎が痛い
顎関節症
顎の痛みも様々です。頻度が高いものは顎関節症という関節の疾患です。顎のの関節に過剰な負担がかかり動きが悪くなるとともに痛みを生じます。鎮痛剤投与や、筋肉の緊張が原因のときには筋肉の血流を良くする薬を服用することで楽になります。必要に応じてマウスピースで力を干渉する場合もあります。既製のマウスピースは合わない場合がありますので、歯科医院でのオーダーメイドを推奨します。(保険適応します)
耳下腺炎
耳の前にある唾液をつくる大きな器官があり、ここの炎症で顎の痛みと勘違いしてしまうことがあります。耳鼻科への受診をお勧めすることがあります。自身で判別がつかないことが多いですので、歯科医院、耳鼻咽喉科のいずれかを受診しましょう。
舌が痛い
舌は咀嚼や発音の時に必ず動くので痛みは不快に感じる方が多いです。
咬傷、裂傷、擦過傷
口腔の傷によるもの。謝って噛んだり、食べ物で傷ついて痛みが生じることがあります。また口腔内の被せ物や、歯が鋭利になって傷ついていることもあります。
舌痛症
原因不明のものから、栄養不足によるもの、全身疾患が原因のものなど様々。状況次第では血液検査などの必要もある。歯科診療所から病院歯科へ紹介する場合もあります。
口腔乾燥症
刺激物でしみたり、ヒリヒリする症状が出てきます。唾液の量が減少することが原因です。口腔乾燥症の中にはシェーグレン症候群という自己免疫疾患が原因となる場合があり、この場合は全身にも症状が発現します。血液検査などの精密検査が必要になります。
口内炎
アフター性口内炎と呼ばれるものが最も頻度が高く、刺激でひどく痛みます。自然治癒する事が多いですが、症状が強い場合には軟膏の塗布などが有効。ヘルペスとは薬が異なりますので、自己診断せずに歯医者へ行きましょう。
舌癌
舌癌は痛みを生じない場合もあります。他の粘膜疾患と鑑別する事が重要です。疑わしい場合には病院歯科などでの精密審査が必要になります。
神経痛(三叉神経痛、舌咽神経痛)
隣り合った血管により神経が圧迫されることなどにより神経痛を引き起こします。
精神的疾患
精神的な要因で舌に痛みに影響することもあります。
長々と羅列しましたが、当てはまる症状はありますでしょうか?今日話したことは口腔内の症状のほんの一部です。痛みが出るということは身体が異常に対して警告を出しているのです。症状には波があり、落ち着いて安心していませんか?
1番怖いのは無症状に経過して大きくなる疾患です。歯周病や虫歯だけでなく、顎骨内の病変なども無症状に経過して重大な状況になることがあります。見逃しがないように歯医者で定期的にレントゲンなどの診査、メインテナンスで早期発見を推奨致します。
📍上越市 高田
歯科診療所 医療法人社団 三上歯科医院