ブログBLOG

2023年02月28日根面う蝕(根っこの虫歯)

皆さんは根面のむし歯を知っていますか?

今回は皆さんに知っていてほしい、根面のむし歯についてお話します🥺

始めに根面のむし歯とは、歯周病や加齢などにより歯ぐきが下がり、露出した歯の根にできるむし歯のことです。

露出した歯の根面(象牙質)は、ヒトの身体の中で最も硬い組織の歯冠部(エナメル質)よりも軟らかく、酸に弱いことで、むし歯のリスクが非常に高いです💦

そして、、、

根面のむし歯は『とても厄介なむし歯』なのです😔なぜ厄介なのか。大きく分けて5つの理由があります。


 

・早期の発見が難しい

→歯冠部にできるむし歯は、初期の頃は白く濁るため分かりやすいですが、根面の象牙質はもともと黄色みがかっていて、白く濁ることなく、うっすら色が変化する程度のため初期の発見は非常に難しいのです。


 

・自覚症状がないことが多い

→根面のむし歯には、「痛い」「しみる」などの自覚症状がほとんどありません。また、くちびるで隠れる位置にできるため鏡などでも見えづらく、むし歯になっていることに気づかないまま進行していることもあり、気づいた時には歯を残すことが難しくなってしまう場合もあります。


 

・歯ブラシが届きにくい

→根面は歯ブラシが届きにくく、磨き残しが多くなる場所です。当てているつもりでも当たっていないこともあり、セルフケアが難しいです。


 

・歯の象牙質は酸に弱く溶けやすい

→ 歯根を構成する象牙質はエナメル質よりも酸に弱く溶けやすいため、磨き残してしまった細菌の影響も受けやすいです。


 

・治療が難しく、治療後も長持ちしにくい

→根面のむし歯は進行している場合、注意しながら治療器具を当てないと歯が折れてしまったり、歯ぐきで隠れているところに広がっている場合、治療器具が届かず、むし歯を取り除くことも詰め物の治療をすることも難しいです。詰め物の治療が難しい場合、歯の神経の治療をして被せ物を入れることもありますが、被せ物の治療も難しい場合には、抜歯となってしまうこともあります。

また、治療できた歯も以前より弱くなってしまうため、長持ちしにくく、審美性も損なわれてしまうことが多いです。

以上の理由で歯根のう蝕(虫歯)には警戒する必要があるのです。




ではどんな方に根面う蝕が起きやすいのでしょうか?

カリエスリスク(虫歯のリスク)が高い方

虫歯が多発傾向にある方は当然、歯根面の虫歯のリスクが高いです。


治療の痕跡の多い方

治療が施され、虫歯がない状態だとしても、CR(詰め物)、クラウンやインレーといった補綴物(被せ物)が多い方は虫歯ができるような食習慣があり、リスクは高いと言えます。また治療した詰め物や被せ物の境目の部分から虫歯が進行してしまうと直視できない部分で根面う蝕が進み、発見が遅れてしまうことがあります。処置した歯も油断せず、段差など適合の悪い修復物は精度の高いものにやりかえることを、おすすめします。


部分入れ歯を使用中の方

部分入れ歯はバネの欠けている歯の虫歯リスクが高いです。歯と金属のバネ(クラスプ)の接触面はプラーク(磨き残し)が停滞しやすいためリスクが高まります。


歯茎が下がっている方

加齢や歯周病の罹患により歯肉退縮を起こした方は歯根面が歯肉より上に暴露し虫歯のリスクが高まります。重度歯周病の場合、全く虫歯がない方もいますが歯周病治療により歯周病菌が減少し虫歯菌が優位になってくる時期があります。治療により歯肉が引き締まり、歯肉の位置が変化することで虫歯リスクが高まることがあります。治療が終えたあとも安心せず歯周病、虫歯ともにリスク軽減すべく予防が大切です。




では、もし歯根面う蝕が起きたらどうするのか?


軽度の場合

進行が深く進んでいない場合にはCR(詰め物)で対応することができます。被せ物の縁から進行している場合には虫歯を除去し被せなおすことで対応できます。

重度の場合

重度の進行した場合には最悪、抜歯となる場合があります。
ですが、条件次第では歯を残せる場合があります。

・虫歯が深く神経まで達している場合

虫歯が深く神経まで達している場合には抜髄処置(神経をとる)ことで修復できる場合があります。ただし神経を取った歯は歯根破折のリスクが高まりますので治療後は今まで以上に注意が必要です。

・虫歯が歯茎や歯槽骨より深く進行した場合

虫歯が歯茎や歯槽骨より深く進行した場合は抜歯となることが多いですが歯根の長さが長い場合には意図的挺出、歯冠延長術といった術式で保存できる場合もあります。
意図的挺出とは歯を意図的に歯茎や骨の上まで引き上げる術式です。歯茎や骨の深い部分まで進行した虫歯はこのままでは修復不可能なので人為的に歯肉・歯槽骨の上部まで歯を引っ張り上げます。意図的挺出には自然挺出、外科的挺出、矯正的挺出といった手法があります。
自然挺出はその名の通り、自然に挺出させます。虫歯を取り切った状態で放置し、歯の萌出力(歯が生えてこようとする力)を利用して挺出させます。外的な力は与えませんが時間がかかります。また自然な力を利用するため引き上げる方向のコントロールが術者側でし難いデメリットがあります。
次に外科的挺出。こちらは外科的に一度はを抜歯し、健康な歯牙組織が歯肉より上にくる位置で固定する方法です。抜歯後すぐに戻し縫合や接着剤などで位置を固定します。歯が再度生着すれば早い結果を得られるメリットがあります。ただし、抜歯操作時に薄くなった歯質が割れたりし抜歯に至るリスクがあるというデメリットもあります。
最後に矯正的挺出です。こちらは部分的に歯の矯正ワイヤーを利用して歯を挺出させます。ゴムを埋まっている歯につけて牽引します。他の挺出手技し比較して良い点は、引っ張り上げる方向をコントロールしやすい点と安全に引っ張り上げる点です。当院での挺出では一番選択頻度が高いです。デメリットがあるとすれば、外科的挺出に比べると時間がかかる点、またワイヤー装着時期の口腔内の違和感が強いなどといった点でしょう。
この矯正的挺出は審美歯科領域での歯肉ラインのコントロールの際にも応用する場合があります。安全かつ確実に挺出できるため1番のおすすめです。


このように対処の仕方はあるものの治療が複雑になったり、挺出処置のように保険外診療となり医療費の負担が増えてしまう場合もあります。


治療が難しい根面のむし歯に大切なことは、『予防と進行抑制』です。具体的にどんなことをしたらいいのでしょうか。


・歯科医院への定期受診

・歯科医院でのフッ素塗布

・フッ素洗口液や高濃度フッ素入りの歯磨き粉を使用する。

根面のむし歯は早期に発見できるほど歯を長く残せる可能性が高まります。根面のむし歯について知った今、自分自身の歯と向き合ってみませんか?😊




 

📍上越市 高田 

医療法人社団  三上歯科医院